鬼常務の獲物は私!?



長期戦を覚悟して、床に座り、太郎くんを膝に乗せた。

頭から背中にかけてをゆっくり撫でてあげると、緊張が解けたみたいで気持ちよさそうに喉を鳴らしてくれた。


「太郎くんまで巻き込んで、ごめんね……。
小雪ちゃんも今ごろ、ひとりで心細い思いをしているかな……早くお家に帰りたいね……」


しばらく出られそうにないけれど、安心できる彰さんのマンションに早く帰りたかった。

彰さん、帰ってこない私に心配するだろうな……そこまで考えて、あれ?と気づく。

そういえば、彰さんとの通話の途中でスマホを取り上げられたんだ。

切られる直前はなにを話していただろうか……そう考えてやっと気づいた。

帰ってこない私に心配するもなにも、通話が切れる前に悲鳴を上げてしまったのだから、もう既にかなりの心配をしていることだろう。

事務長に騙されたとも言ったことだし、今ごろきっと、どこの猫カフェなのかと、必死に私の行方を探しているに違いない。


朝まで待つことなく、助けてもらえる希望が湧いてきたけれど、同時に心苦しくも思った。

今日は遅くまで仕事だと言われたのに、私がマヌケなばかりに迷惑をかけてしまった。

彰さん、ごめんなさい……。


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