鬼常務の獲物は私!?
ジャケットのポケットに触れると、ちゃんと入っている。
それを取り出すと、膝の上の太郎くんが匂いを嗅いでひと舐めした。でもすぐに興味をなくして、顔を逸らされてしまう。
本人に興味を示されない、太郎くんマスコット。これ、星乃教の御神体だと言われたんだよね……。
あの時は怪しいと思い、星乃ちゃんのメンタルの心配までしてしまったけれど、もしかしたら信じないからバチが当たって、こんな目に遭ってしまったのかも。
『信じる者は救われる』と、星乃ちゃんの声が脳裏に響いた。
ハッとして太郎くんマスコットを両手で握りしめて頭上に掲げ、祈りを捧げた。
さっきは信じなくてごめんなさい……これからは信じることにしますので、どうか太郎くんと私を、彰さんのもとに帰して下さい……。
すると、ドアの外でガタガタンと大きな物音が聞こえた。
それは目の前の引戸が揺すられた音ではなく、もっと遠くの……玄関ドアを手荒に開けた音だろうか……?
急いでドアに頰をつけ、外の様子に耳をそばだてる。
いくらなんでも、彰さんが私を探して駆けつけるには早すぎると思うけれど……そう思った途端に「日菜子、どこだ!」と叫ぶ彰さんの声がした。