鬼常務の獲物は私!?
嘘……通話を切ってから30分も経っていないのに、どうやって……。
驚いた後には手の中の御神体を見つめてしまう。
もしかして、祈りが通じたとか?
星乃教の神様って……すごいのかも。
「日菜子‼︎」ともう一度呼ばれ、慌てて「ここです! 奥の小部屋です!」と返事をした。
立ち上がり、ドアと壁の間に押し込んだ猫用品を急いで片付けていたら「まだそこにいろ」と彰さんの声がして、続いて物騒な言葉も聞いてしまった。
「許さん。俺から日菜子を奪おうとしたらどうなるか……その豚みたいな体に教え込んでやるから、覚悟しろ!」
人を殴りつけるような音や、テーブルや物が倒される音が響き、私は慌てふためいた。
すぐに出て行って彰さんを止めたいところだが、たくさん詰め込んでしまった猫用品が邪魔をして、中々引戸を開けられない。
彰さんに人を殴らせたくなかった。
それは事務長の身を心配するからではなく、傷害事件になったら、今までの仕事の努力が水の泡になってしまうから。
「太郎くんも手伝ってよ」と言いつつ、もたもた片付ける私。その耳に、彰さんの怒鳴り声と事務長の悲鳴以外に、もうひとりの男性の声が聞こえた。
「神永常務、そこまでにして下さい。
もう十分にダメージは与えたと思います」
ひとりだけ冷静なその声は……間違いなく高山さん。
一緒に来たなら、もっと早く止めてよと言いたかった。
やっと猫用品を片付け終えてドアが開く状態になり、ガラリと開けて飛び出すと……店内の惨状に目を見開いた。