鬼常務の獲物は私!?
やっぱり、そうなるよね……。
私が騙されたという証拠はない。店長の本間さんは脅されているみたいだし、証言してくれるとも限らない。
一方、事務長はひと目で分かる被害を受けていて、これはどうみても相手に分がありそうだ。
どうしようという視線を彰さんに向けると、なぜか自信ありそうな顔で「大丈夫だ」と力強く言われる。
私のポケットに彰さんの手が入れられた。
取り出されたのは太郎くんマスコットならぬ、御神体で、それを彼は高山さんに向けてポンと放り投げた。
「ああっ! 御神体を粗末にしたらバチが当たっちゃいます!」
思わず大きな声を出した私に、彰さんと高山さんが同時に「は?」と聞き返す。
「御神体とは何のことでしょう。
これは、こういう物ですが……」
受け取った御神体の背中のチャックを、高山さんが下げている。
チャックを開けては絶対にダメだと星乃ちゃんに言われたことは、しっかり覚えていた。
バチを恐れる私は慌てて高山さんのもとに駆け寄り、止めようとしたのだが……一歩遅かったようで、太郎くんマスコットの中から輝く御神体が外界に姿を現してしまった。
「あ、れ……?」
大きさは8×4センチほどのメタリックブルーのボディに、録音とか再生とか書かれた銀色の丸ボタンが3つ付いた御神体。
なんとなく近代的な雰囲気を感じてはいたが、やはりというか、その通りな物が出てきて逆に驚いた。
これってもしかして……「音楽プレーヤーですか?」と尋ねると「ボイスレコーダーです」と答えが返ってきた。
「私が用意をして、福原さんのご友人の辻占さんに渡し……」