鬼常務の獲物は私!?



説明してもらって、ようやくこれが何なのかを理解した。

高山さんは、しつこそうな事務長がいずれ私がひとりになるタイミングを狙って接触してくるだろうと考えていたそうだ。

今回のようなことになるとまでは想像していなかったが、待ち伏せされて強引に食事に誘ってくることを考え、その証拠を残すためにボイスレコーダーを持たせようと考えたらしい。

証拠があれば理事長先生にもっと強く働きかけたり、ストーカー被害を警察に訴えやすくなるから。

しかし、それをそのまま私に説明してしまうと、過剰に怖がらせてしまうかもしれない……。

そう考えた高山さんは、太郎くんマスコットを手作りし、中にボイスレコーダーを忍ばた。

そして、本来の目的を隠して私に持ち歩かせるために、星乃ちゃんに託したそうだ。

親友からのプレゼントなら、私が怖がることも怪しむこともないだろうと考えて……。

御神体うんぬんは、星乃ちゃんがひとりで考えたことみたい。


「渡した初日から役立つとは思いませんでした」と高山さんは説明を終えて、録音中のボイスレコーダーを止め、最初から再生した。

途中で何度か早送りを繰り返すと、ここに着いた時の私と事務長の会話が流れる。

手首を掴まれ『離して下さい』と訴える私の震える声に、婚姻届にサインするように迫る事務長の卑怯な言葉。

体を担ぎ上げられた時の私の悲鳴や、『体の隅々まで可愛いがってあげるから』と薄ら笑う気持ちの悪い声。


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