鬼常務の獲物は私!?



本間さんからしたら、戸惑う状況。

危険な目に遭っているはずの私はニコニコしているし、事務長は殴られて酷い顔になり、しかも肩を落として縮こまっている。

そして見知らぬスーツ姿の男性がふたりいて、店内は壊されていて……。


「ええと……通りすがりのイケメン空き巣泥棒が、日菜ちゃんを助けてくれたとか……?」


物凄い勘違いをされて慌てる私は、彰さんと高山さんのふたりを指差し「違います。私のお付き合いをしている人たちで……」と言ってしまった。

「えっ⁉︎ 二股なの?」と本間さんをさらなる勘違いへと落としてしまい、ますます焦ってしまって、うまく言葉が続かない。

すると説明下手の私に代わり、高山さんが簡潔明瞭に全ての事情を話してくれて、本間さんはやっと納得してくれた。


「そうでしたか。いや〜日菜ちゃんが無事でよかった。俺が悪かったよ。電話のことは本当にごめんね……」


本間さんは猫のイラストが描かれたキャップを被っていた。

それを脱いで、少々薄くなった頭頂部を私に向け、謝ってくれる。

慌てて「やめて下さい」と謝罪を断り、代わりに私が深々と頭を下げた。


「本間さんのお店を巻き込んでしまったのですから、私の方こそごめんなさい。あの、お店の片付けはちゃんとやりますので……」


彰さんが怒りを爆発させたために、店内は滅茶苦茶になってしまった。

倒れたテーブルや椅子を戻すことはできても、猫タワーは折れてしまっているし、売り物の猫グッズの中には壊れている物もたくさんある。

カーペットに事務長の鼻血も付いていたりと、復元には時間がかかりそうだった。

明日の営業は無理だと分かっているが、倒れた椅子を起こし、「事務長さんはそっちのテーブルを直してください!」と命令して、片付け始める。


< 351 / 372 >

この作品をシェア

pagetop