鬼常務の獲物は私!?
なんとか捕まえた太郎くんと共に、店の外に押し出された私たち。
事務長は「すみませんでした」と消え入りそうな声で謝り、フラフラしながら夜の街へと消えて行った。
ビルの隙間に三日月が見えていて、綺麗な星も見える。
空に向けてうーんと伸び上がってから、数メートル先の路肩にハザードランプをつけて停車中の、うちの会社の営業車を見つけた。
それを見て、仕事中だったのに私を助けるために彰さんが駆けつけてくれたことを思い出す。
「お仕事放り出して、大丈夫ですか?
私の注意が足りないばかりに、迷惑かけてごめんなさい……」
改めて申し訳なく思い、俯いて謝ると、大きくて温かい手がポンと頭に乗せられた。
「謝るな。迷惑かけたとも思うな」
「で、でも……」
「お前は俺の女だろ。
俺が助けに行くのは当たり前だ」
その言葉にも強い眼差しにも、胸がキュンと音を立ててから高鳴り始める。
私を助けに来てくれたのは当たり前なのか……。
そういえば、驚くほどの早さで居場所を見つけてくれた。その理由も、私が彰さんの女だからということなのだろうか……。
そんな疑問をぶつけてみると、ニヤリと笑う彼は自分のスマホを取り出してこう言った。
「お前のスマホの現在地は、GPS機能で俺のスマホから確認できるように設定してある」
え、それって……私の行動は常に監視されているということだろうか……。
調べられて別に困ることはないし、今回はそのお陰ですぐに見つけてもらえて助かったけれど、背中に冷汗が流れるのはなぜだろう。