鬼常務の獲物は私!?
社内向けの式典は4月中に終えていて、明日行われるのは取引先関係者を招待しての祝賀会。
うちの社員は係長職以上と、受付や進行役の一部の総務の人以外は、人数の関係で出席できないことになっている。
つまり私も、明日の彰さんの勇姿を見ることができないのだ。
それについては、残念に思う。拍手の中で、新社長として壇上に立つ凛々しい姿を見たかった……。
でも仕方ない。プロポーズされたとはいえ、私はまだ奥さんじゃないし、末端平社員なのだから。
彰さんは私に軽くキスをして「じゃあ、行ってくるな」と背を向けた。
ドアノブに手をかけ開けようとしてから、思い出したように振り向いて言った。
「そうだ、明日はお前にも来てもらうから用意しておけよ」
「え? 私、ただの営業事務員ですけど……」
うちの会社の出席者は、係長職以上と一部の総務の社員だけ。そう言われたのに、どうして私が行っていいのか分からない。
首を傾げる私に彼は言う。
「小百合が花束贈呈の役をお前にやらせたいと言ってな。席はないが協力してくれ」
「比嘉さんが……あっ」
そういえばと思い出したことがあった。
昨日、比嘉さんと星乃ちゃんと私の3人で、初めて一緒にお昼を食べた。
比嘉さんの恋愛成就のために星乃ちゃんに占いをしてもらい、高山さんを落とすための作戦を立てていたのだけれど、話が社長就任祝賀会に逸れてしまった時があった。
私が『彰さんの勇姿を見たかったな……』とぼやいたら、比嘉さんは腕組みしてなにかを考えていたような……。
あれは私を参加させるための方法を考えてくれていたのかと、今気づいた。