鬼常務の獲物は私!?
ニコニコと元気さをアピールする私を見て、彰さんは心配そうな表情を解いてくれた。
私の頰をひと撫でして「微熱が続くなら、月曜は病院に行けよ」と風邪の話を終わらせ、腕時計に視線を落とした。
「時間だな」と言うと同時に、ドアがノックされる。
呼びに来た高山さんと一緒に彰さんは出て行って、長い廊下をエレベーターホールへと歩く背中を、私は入口で見送った。
パタンとドアを閉めた後は、ベッドに腰掛ける。
私の出番は20分後くらいで、比嘉さんが呼びに来るまでこの部屋に待機していることになっている。
少し、横になっていようかな……。
ハーフアップにした髪型を崩さないように気をつけて、横向きで寝転がる。
ウキウキと楽しい心持ちであるのに、体がついていかない。鈍臭い私だから、気持ちばかりが先行してしまうことは、よくあることでもあるけれど……。
目を閉じると、すうっと意識が遠退いて、浅い眠りの中をまどろんでしまう。
寝たらダメだという意識が働くせいか、夢の中でパッと目を開け起き上がる自分がいた。
でも、それも夢だったと知り、なんとか目覚めようと夢の中でもがく。
それを何度も繰り返していると「福原さん、起きて下さい!」と誰かに体を揺すられた。