鬼常務の獲物は私!?
今度は夢ではなく、ハッとして慌てて身を起こす。
ベッドサイドには大きな花束を手に、呆れ顔で私を見る比嘉さんの姿が……。
「ごめんなさい!」と謝り立ち上がると、怒られるのではなく「こんな時に寝るとはさすがです」と変な褒め方をして、比嘉さんは私のスーツのシワを伸ばしてくれた。
「急ぎましょう」とも言われ、慌ただしく控室を出てエレベーターに乗り込む。
階をふたつ下りて廊下を歩き、ホール前に着くと、中から大きな拍手が聞こえてきた。
途端にドキドキと、鼓動が二割り増しで速度を上げる。
この中に、社長という夢を叶え、皆さんに祝福される彰さんがいる……。
その姿はきっと、神々しく光り輝いているはずで、早く拝みたくてソワソワしてしまった。
ドアを少し開けて中を覗いた比嘉さんが、私に言う。
「会長の挨拶が終わって、ちょうど神永社長のスピーチが始まったところのようです。入りますよ」
渡された花束を両手に抱え、比嘉さんの後ろに付いてそっと会場に入る。
広いホールには円卓が80ほど並んでいて、まるで結婚式の披露宴みたい。ただ圧倒的に男性率が高いから、全体的に色味が暗いけれど。