鬼常務の獲物は私!?
転びそうになった時とは違う恥ずかしさに襲われて、顔が真っ赤になった。それに加えて焦りも加速中。
彰さんのご両親にもまだ挨拶していないのに、こんなふうに紹介されてもいいのだろうか……よくない気がする……。
どうしようとうろたえる私の横では、会場のヤジに答えるように、彰さんが私について簡単に説明していた。
営業部の事務員であることや、料理上手であること。それと交際期間が4年で……え? 4年ではなく4ヶ月なのに、なぜそんな嘘を……。
取引先の大事なお客様とうちの会社のお偉いさんたちの大注目の中、私だけ赤面したり青ざめたり、焦ったり驚いたりと、完全にキャパオーバーに陥っていた。
それなのに彰さんに「ほら、日菜子もひと言挨拶しろ」とスタンドマイクの前に立たされてしまう。
たくさんの目が私に……なにを言ったらいいのか……む、無理です……。
胸の高鳴りとは違う動悸がして、急に具合が悪くなってしまった。
ただの風邪だと思っていたけれど、やっぱりどこかおかしいのかも……。
病院に行っておくべきだったと後悔する中で、目の前の景色がグニャリと歪み、体が揺れる。
「日菜子⁉︎」と驚く彰さんの声を聞いたその後は、意識がプツンと途切れてしまった……。