鬼常務の獲物は私!?
「せ、生理ですか……? ええと、先月の始め頃だった気が……あの、どうして……」
理事長先生に限ってセクハラ発言のはずはない。
だったらどんな意味で聞いたのかと戸惑う私に、目尻にたくさんのシワが寄った嬉しそうな視線が向けられた。
「年老いたので今は現場に立っていないが、私は産婦人科医なのだよ。お嬢さんのような症状の女性は診ればすぐに分かる。妊娠しているよ、おめでとう」
妊娠って……私のお腹に赤ちゃんがいるというとで……えええっ⁉︎
言われて気づいたが、生理が半月ほど遅れている。
体調不良は風邪ではなく妊娠の兆候だったのかと、驚きつつも色々なことに納得していた。
「早い内に病院できちんと妊娠検査を受けなさい。そうだ、うちの病院で産まないかい? 引退して10年になるが、神永くんとお嬢さんの子供なら、ぜひ私が取り上げたい。もちろん無理にとは言わないが」
「は、はい……」
正直今は、産む日のことまで頭が回らない。
このお腹に赤ちゃんが……彰さんの赤ちゃんが……。
やっと妊娠のふた文字が心に浸透して、じわじわと喜びが広がり、大きく膨らんでいく。
比嘉さんと高山さんも口々に祝福の言葉をくれて、私の妊娠を喜んでくれた。