鬼常務の獲物は私!?
社長への謝罪が済めば、この階にもう用事はない。この後私は、営業部に戻って仕事をするだけだ。
「神永常務、今日は本当にありがとうございました。これで心配事が消えて、午後からの仕事を頑張れそうです。
それでは、私はこれで失礼しま……」
お礼を言って退散しようとしたら、「待て」と言われて、常務に手首を掴まれてしまった。
そのまま常務室の中に連れ込まれ、私の後に入ってきた高山さんに、ドアをパタンと閉められてしまう。
「え、え?」と戸惑う私。
中に入ってから常務に手首は離されたけれど、事務的な笑顔を浮かべた高山さんがドアを塞ぐように立っているから、抜け出せそうになかった。
「あ、あの……」
1時間のお昼休みは、後3分ほどで終わる。
この部屋に私の仕事はなく、営業部に戻らないといけないのに、話しかけても無視されて、常務と高山さんが話し始めた。
「高山、次の仕事は?」
「14時に鶴橋女子大学付属病院、第3内科佐藤医長とお約束があります。医療機器メーカーへプロ、内視鏡課係長の高島さんも営業同行される予定です」
「そうか。出発は13時半で間に合うな。
それまで休憩時間をくれ。お前は席を外していろ」
「かしこまりました。お車を正面玄関前に回しておきます。13時半に必ず下りて来て下さい」