鬼常務の獲物は私!?
短い受け答えの後に受話器を置いた常務は、机の縁にお尻を持たれ、腕組みをして、私をじっと見つめた。
やっぱり嘘がバレたんだと思ったが、そうではなく、「どうぞお好きなだけ使って下さい、だとさ」と、言われただけだった。
「お前って、仕事上で不必要な人材なんだな……」
そんなひどい感想まで付け足され、焦りが引いた後は凹んでしまった。
私がいなくても、営業部になんの支障もないのは、自分でもよく分かっている。
むしろ、いない方がミスを減らせていいんじゃないかと思うけれど、私はこの仕事が好きだし、営業部の皆んなは優しくて居心地がいいから、これからも働かせて欲しい。
ドアから2メートルほど離れた位置で、立ち尽くしてうつむいていた。
『不必要な人材』という言葉に傷ついて、やっぱり神永常務は苦手だと感じてしまう。
そんな私に常務は声を和らげて、言葉を付け足した。
「俺にとってお前は、必要な存在だがな」
「え……?」
「さっさとソファーに座れ。
珈琲と紅茶、どっちがいい?」
「あ、えっと、ココアで」
「俺の部屋にそんな物はない。二択だ」
「ご、ごめんなさい!
あの、ミルクと砂糖多めの珈琲を……」