鬼常務の獲物は私!?



上座のひとり掛け用ソファーに座ると思っていたのに、同じソファーに座られて、また少し緊張してしまう。

でも、それは逃げ出したいほどではない。

間にひとり分の空席があるし、湯気立つ珈琲の香りが、心を落ち着かせてくれるから。


「いただきます」

砂糖とミルクをたっぷり入れて、珈琲を口にする。
常務は無地の白いカップを使っているが、私の白いカップは、青い猫が描かれていた。


「このカップ、かわいいですね!」

猫に反応して隣に笑顔を向けると、神永常務は珈琲カップをソーサーの上に戻してから、私に言った。


「高山が買ってきたカップだ」

「高山さんは猫がお好きなんですか?」

「そんな話を聞いたことはないが……なぜか今朝、持ってきたんだ。今日はこれをお使い下さいと言ってな。おかしな奴だ」


高山さんが猫好きなら、是非一緒に猫トークをしたいところ。

私の愛猫、太郎くんのかわいさを他の人にも分かって欲しくて、以前はスマホに入っている太郎くんの画像アルバムを、会う人会う人に見せまくっていた。

でも、それをやめるように星乃ちゃんに注意された。『すべての人類が猫好きだと思うな』と言われて……。

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