鬼常務の獲物は私!?
以降、太郎くんの話は猫好きをアピールしている人にしか話さないし、画像も見せないことにしている。
高山さんが猫好きならいいのにと、青い猫のカップを見ながら考える。
このカップ……かわいいけど、ちょっとだけ惜しい。青じゃなくて、白黒の猫なら、太郎くんと同じでもっと嬉しかったのに……。
その気持ちが、口をついて出てしまう。
「うちの太郎くんは、黒と……」
話し出した途端に「やめろ」と低い声がした。
それまで、珈琲のおかげで穏やかに流れていた空気が、急に張り詰めてしまう。
まさか、怒ってる……?
不機嫌そうに顔を歪める神永常務の顔を見て、パッと目を逸らす。
どうしよう……怒らせちゃったみたい……。
でも、どうして? 常務の怒りのスイッチの場所が分からず、困惑してしまう。
私が太郎くんの名前を出した直後に、怒ったようだけど、ということは……。
怒りの理由を考えて、常務は猫嫌いなんだという結論に達した。
猫嫌いな常務に高山さんが猫のカップを買ってきたのはおかしいけれど、右横からジロリと睨む視線を感じては、そんなことを深く考えている余裕はなかった。
「すみませんでした……」
太郎くんの話をしてしまったことを謝って、猫のカップをソーサーに戻す。
その後は、萎縮して怯えるしかできない。