鬼常務の獲物は私!?
「俺の前で太郎の話をするな。不愉快だ」
神永常務は冷たい声でそう言った。
しかし、数秒の沈黙の後に、急に真逆のことを言い出した。
「いや、やっぱり太郎の話を聞かせろ。
敵の情報は掴んでおかねばならないからな」
敵……? あんなにかわいい太郎くんを、敵とまで言うなんて、やっぱり常務は相当の猫嫌いなんだ……。
嫌われてしまった太郎くんを可哀想に思いながら、話せと言われたので外観から説明する。
「えっと、太郎くんの毛色はモノトーンで、丸顔です」
「モノトーン……? 黒髪にグレーのメッシュでも入れているのか? 変わった髪型だな」
「そうですか? 割とよく見る色合いですけど」
「うーん……まぁ、いい。年齢は?」
猫カフェの里親募集の張り紙を見て、生後1ヶ月の太郎くんを、私は家族に迎えた。
それが5年前のことで、年齢は5歳。
「人間でいうと……35歳くらいです」
「俺より歳上なのか……。
それで、衣食住を女にたかるニートとは、驚いたな」