鬼常務の獲物は私!?
神永常務は腕組みをして、眉間に深いシワを寄せて考え込んでいた。
その横顔を見ながら、私は怯えるのではなく、キョトンとしてしまう。
ニート? 太郎くんは猫だから食事や住まいを与えられて当然なのに、人間みたいな非難の仕方をするのはどうしてなのか。
もしかして……常務の中の立派な猫像とは、野良猫なの?
確かに野良猫は、自分で狩りをして食べ物を得て、寒くても暑くても外で寝起きして、強くて立派だと私も思う。
でも、か弱い家猫であっても、太郎くんは私を癒してくれる大事な存在なんだけどな……。
「お前って、ダメな男に弱いタイプなのか?」
と、不愉快そうな常務に聞かれた。
「え? そんなことないと思いますけど……」
「ふん、自覚がないのか。
他には? 家で太郎となにをして過ごしているんだ?」
「ええと……」
頭の中に愛しい太郎くんの姿を描く。
空想の太郎くんが私の帰宅を喜んで、「寂しかったにゃ〜」と甘えてきた。
狭くて古びたペット可のワンルームマンションは、私と太郎くんの愛の巣。
私がベッドに座ると、すかさず膝の上に飛び乗って、ゴロゴロと喉を鳴らして、安心しきった顔をして寝ちゃうのが愛しくて……。