鬼常務の獲物は私!?
神永常務はリラックスしているようで、時々長い吐息を吐き出していた。
それに釣られるように、私の緊張も解けている。
髪の毛をゆっくりと撫でながら、今の常務になら、なにをしても怒られないのではないかという気持ちになっていた。
さっきから、じっと視線を止めているのは、彼の耳。
今まで人の耳に注目したことはなかったが、常務の耳は形が整っていて、素敵だ。
思わず触れてみたくなり、人差し指で耳介をそっとなぞると、彼の肩がピクリと震えた。
テーブルの方に向いていた顔がゆっくりと上を向き、私の膝の上で姿勢を変えて仰向けになる。
長い足がソファーからはみ出していた。
つい、耳に触れてしまった私の右手は、常務の左手に捕まえられ、唇へと誘導される。
そして……私の人差し指が彼の唇に触れた。
指先に伝わる柔らかな感触と、大人の色気をたたえる瞳に見つめられて、たちまち鼓動が速度を上げていく。
「日菜子」
下の名前で呼ばれ、戸惑った。
「お前が欲しい」