鬼常務の獲物は私!?
昨日も告白されて、今日も求められ、私のどこが気に入ったのか分からないけれど、まっすぐに見つめてくるその眼差しには、嘘はないように見える。
彼の告白を、昨日の私は迷うことなく断った。
だって、恐い人は苦手だから……。
でも今は、ほんの少しだけ心が揺れている。
私だって彼氏が欲しいと思う年頃の女性だから、素敵な容姿の男性に二度まで求められたら、どうしようかと考えてしまう。
それに、星乃ちゃんたち女子社員に強くプッシュされたことも、心を揺らす原因かもしれない。
求められたことにドキドキしつつも、返事に困る私。
昨日とは違う私の様子を見て、神永常務はわずかに口もとを緩めて微笑んだ。
「迷う必要がどこにある?
俺ほどの男は、そうそういないぞ」
「で、でも……」
「はいと言え。
太郎と別れて、俺の女になれ」
神永常務は、私を落とす自信があるみたい。
しかし、彼の最後の言葉のおかげで、揺れ動いた気持ちは、元いた場所に無事に着地した。
「嫌です。太郎くんは大切な存在なんです。
別れるなんて、絶対にできません」