鬼常務の獲物は私!?
キッパリと言い放つと、彼の瞳から瞬時に甘さが消えて、冷たく鋭い視線で睨まれてしまった。
やっぱり、恐い……付き合うなんて、私には無理だよ……。
そう思うと同時に、どこかからアラーム音が聞こえてきた。
神永常務はチッと舌打ちして素早く立ち上がると、スーツのジャケットのポケットからスマホを取り出し、アラーム音を止めた。
「俺は出かける。お前も仕事に戻れ」
「は、はい」
恐いと感じていたところだったので、これ幸いと立ち上がりドアに向かう。
常務は机の上で、なにかにサラサラとペンを走らせていた。
そして仕事鞄とコートを手に、出て行こうとしていた私にすぐに追いついた。
「これを持っていけ」
渡されたのは、名刺。
社名と役職名が書かれている、彼の名刺だ。
神永常務が何者かを当然知っている部下の私に、なぜ名刺を?
疑問に思いながらも「どうも、ご丁寧にありがとうございます」と名刺をいただいた。
ポケットにしまおうとしたら、「バカ、裏を見ろ」と言われてしまう。
ひっくり返して、そこにメールアドレスと携帯番号がメモされていることに気づいた。
「俺の私用の連絡先だ。
5分後に、お前の私用アドレスからそこに連絡を入れろ」