鬼常務の獲物は私!?
それはつまり、連絡先を交換しようということで、今後は営業部を通してではなく、個人的に常務から連絡がきてしまうということでもあり……。
名刺を手に考え込んでいたら、ドアの外に押し出されて、常務が戸締りしていた。
「いいか、必ず連絡しろよ。
忘れたらどうなるか分かってんな?」
念押しと脅しを同時にしてから神永常務は廊下を走り、階段の方へ曲がって消え去った。
その姿が完全に見えなくなってから、私はやっと動き出す。
走るほどに忙しいなら、私なんかに構わない方がいいのに……と思いながら、ゆっくりと階段を下りて営業部に戻った。
自分のデスクに着くまでの短い距離で、営業部の社員、数人と目が合い、ニヤニヤされてしまった。
それは、神永常務が営業部に連絡を入れて、私を借りたいと言ったせいだと思う。
色々と困ったなと思いながら席に座ると、星乃ちゃんが待ってましたとばかりにやってきた。
「日菜、報告は義務だから」
「え……」