鬼常務の獲物は私!?
昔から私は説明するのが下手くそで、伝えるべきことが多い場合、なにから話していいのか分からなくなって、言葉不足に陥ることもしばしば。
「ええと、社長は怒っていなくて……常務室で珈琲をご馳走になって……」
「社長への謝罪は無事に済み、その後、常務室で珈琲でも飲んでいけと誘われたんだね。
珈琲タイムは、常務とふたり切り?それとも秘書もいたの?」
私の特性を理解している星乃ちゃんが言葉不足を補ってくれてから、必要な情報を聞き出してくる。
説明しろと言われるより、質問に答える方が話しやすいので、それはありがたい。
「ふたりだよ。高山さんは出て行って、それから神永常務が猫のカップに珈琲を……あ、そうだ、常務は猫嫌いなんだって」
私にとっては猫の話は重要ポイント。
でも、星乃ちゃんはそうではないみたいで、ニヤリとしながら質問を重ねてきた。
「猫嫌いはどうでもいい。
ふたり切りの常務室で、なにを話してなにをされたのかが聞きたいんだよ」
「それは、ええと……」
お昼の休憩室でのやり取りが再現されそうなので、「怒らないでね?」と前置きしてから話した。
「なんかね、膝枕をする流れになっちゃって……その時にまた告白されて、また断ったんだけど……」