鬼常務の獲物は私!?
今度は休憩室の時みたいに、大声で怒られたりしなかった。
その代わり、左右の頰っぺたを摘まれ、思いきり横に引っ張られてしまう。
「いひゃい。怒らないでって言ったのに……」
「怒ってない。呆れてるだけ。
まったく日菜はなんで、自ら運を逃すような真似をするんだよ」
「だって……」
「それで? せめて私的な連絡先くらいは交換したんだろうね?」
そう言われて、ハッと思い出す。
5分後に連絡しろと神永常務に言われていたのに、10分経ってしまった。
慌ててもらった名刺を取り出して、手書きのアドレスをもたもたしながらスマホに打ち込む。
【福原です。遅くなって申し訳ありません】とだけ送信したら、20秒後に返信が返ってきた。
【遅すぎる。罰として明後日の夜の都合を空けておけ】
明後日といえば……。
私のスマホを堂々と覗き込んでいる星乃ちゃんが、隣で満足げに頷いていた。
「クリスマスイブは、常務とデートか。よしよし、なんとか占い通りの結果になりそうだ」
そう、明後日はクリスマスイブ。
今年はイブが土曜日に当たり、既にレストランは予約でいっぱいだという情報を、数日前のテレビで見た気がする。