鬼常務の獲物は私!?
クリスマスイブは強引に
◇◇◇
今日はクリスマスイブ。
神永常務とデートの約束をしてしまった日。
待ち合わせ時間の18時が近づいたので、膝の上に乗せていた太郎くんをそっとベッドの上に下ろす。
「神永常務とお出かけしてくるね。
寂しい……? なるべく早く帰ってくるから、いい子で待っていてね」
太郎くんは私を引き止めたりしない。その代わりに、温もりを求めて毛布の中に潜り込んでしまう。
その姿に一緒にいてあげたい気持ちが込み上げてくるけれど、約束を破ることもできなくて、玄関に向かった。
マンションの外に出ると、冷たい風に思わずコートの襟を引き寄せる。
ポツリと雨粒が頬に当たった。
天気予報は曇りだと言っていたのに……。
傘を取りに戻ろうかと迷ったが、雨は極少量で予報からも強まることはないだろうと考えた。
そのままアスファルトの道に足を踏み出し、待ち合わせの場所へと急いだ。
神永常務に昨日、私の住むマンション前まで車で迎えに行くと言われていたのだけれど、断った。
マンション前の道は車が一台やっと通れるくらいの細道なので、ここで停車すると他の人の迷惑になってしまうから。