鬼常務の獲物は私!?
それで、近くのコンビニの駐車場でという話になり、自宅から徒歩3分のその場所に今、向かっている。
思えば、男の人と待ち合わせたり、デートに出かけるのは随分と久しぶり。
付き合うまでには至らなかった男性たちと、過去に数回デートしたことはある。
あの時は弾む気持ちを感じていたのに、今は困る気持ちが先行してしまう。
星乃ちゃんが【楽しみにしています】なんてメールを勝手に送信しちゃうから……期待させてしまったのではないかと、困るばかりだ。
すぐに見えてきたコンビニの駐車場には3台の車が止まっていて、その一台が白のベンツであることが遠目にも分かった。
車種は聞いていないけれど、あれじゃないかなと予想する。
信号を渡って近づいていくと運転席のドアが開いて、降りてきたのは高山さんだった。
どうして高山さんが……?
そう思う私にいつもの事務的な笑顔を浮かべて、高山さんは後部席のドアを開けてくれる。
その奥には神永常務がいて、長い足を組み、くつろいだ姿勢で座っていた。
「よし、今日は遅れずにきたな」
思わず私は、常務と高山さんを交互に見てしまった。
高山さんが来ていることの意味は、運転手役ということなの……?
プライベートの用事まで常務に命令されるなんて……口には出さずに高山さんに同情していたら、「乗れ」と中から命令された。