鬼常務の獲物は私!?
どうしてこうなったのかというと、それは昨日の仕事終わりの話。
翌日の私と常務のデートについての会議が、会社近くのファミレスで開かれた。
そこに集まったのは営業部の女子社員10名で、まずは星乃ちゃんの水晶玉占いから始まった。
『見えた。明日の服装はズバリ白。俺様な男は、自分色に染めてやろうという意思が働くので、白を着る女を好む。
素材はニットで、ワンピース。コートは……靴は……バッグは……髪型は……』
星乃ちゃんの占いにより、デート当日の私の服装は決められたが、それに合う物を持っていなかったので、親切にも皆んなが貸してくれたのだ。
だから、『よく似合っていて可愛い』と言ってもらえても、それは私の成果じゃないので、喜んではいけない気がしていた。
大通りを走っていた車は、賑わいのある通りの一軒の店の前で、路肩に停車した。
「着きました」と高山さんが言う。
ここは、10階ほどあるビルの正面で、1階には有名なジュエリーショップが入っていた。
それを見て「まさか……」と思っていたら、先に降りた常務が私に向けて手を差し伸べ、「降りろ」と命じた。