鬼常務の獲物は私!?



そこに陳列されているのは、『ウィンターラブシリーズ』とタイトルが添えられた指輪たち。

デザインが少しずつ違う6つの指輪が、六角形の雪の結晶の飾りの上に、美しくディスプレイされていた。

石はどれもダイヤモンドで、その輝きに魅力され、思わず「綺麗……」と呟いてしまう。


「気に入ったのがあれば言え。買ってやる」


隣で常務にそう言われて、ハッとしてダイヤの輝きから、値札の方に視線を映す。

小さな値札には、7桁の数字が並んでいて……驚いて口をあんぐりと開けた直後に、心の中が慌て始めた。


こんなに高い指輪は絶対にダメ……。
値段も無理だけれど、指輪ということが、そもそもダメで……。

神永常務はそうは思わないのかもしれないが、男の人から贈られる指輪には、約束の意味が込められていると私は感じてしまう。

婚約とか、結婚とか、それより軽い意味でも、お付き合いを始める記念としてとか……。


神永常務は「これが似合いそうだ」と指輪のひとつを指差して、女性店員がガラスのショーケースの鍵を開けようとしていた。

指輪だけは絶対にダメだと焦る私は、神永常務の腕を掴んで慌てて言った。


「指輪はダメなんです!
あ、あの、えーと……そうだ、私は指輪じゃなくて、ネックレスがずっと欲しかったんです!」


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