鬼常務の獲物は私!?
神永常務が指輪から目を逸らして、私をジッと見つめる。
物問いたげな視線で見られ、私の心は今度は別のことで焦り始めていた。
指輪購入を阻止するためとはいえ、ネックレスが欲しいと力いっぱい言ってしまった……。
強欲な女だと思われただろうか?
どうしよう……。
思わず目を逸らしてしまうと、頭に大きな手が乗り、優しく二度叩かれた。
「欲しい物があれば、今みたいに口に出して言え。どうも、お前の考えていることは分かりにくい。遠慮されるよりねだられる方が、俺は嬉しいからな」
社内で見かける神永常務は、大抵不機嫌そうで、社員たちを睨むような目で見てくる。
その目つきが恐くて苦手なのだけれど、今の常務の目は弓なりに弧を描いて、本当に嬉しそうで……。
心臓が勝手に、ドキドキと速度を上げていく。
いつもこんな風に笑顔でいてくれるなら恐くないのに……そう思っていた。
少し残念そうな顔になってしまった女性店員に連れられて、私たちは入口近くのショーケースに移動する。
そこには色取り取りの石を付けたネックレスが、綺麗に並べられていた。