鬼常務の獲物は私!?
値段は5万から20万円で、私にとっては間違いなく高い部類に入るのに、隣で常務が「安いな」と不満そうに呟いていた。
「もっと高い物はないのか」と言われてしまいそうな気がして、慌てて「わぁ、可愛い!」と感想を口にしてみる。
その気持ちは嘘じゃない。たくさん並べられているネックレスの中のひとつに、私の好みのど真ん中の物があり、それに目が留まっていた。
ペンダントトップは小さめで、花型のプラチナの枠にピンクダイヤが埋め込まれている。
チェーンもプラチナで、値段は12万円と、このショーケースの中では中位。
もっと安い物もあるしどうしようかと迷いつつも、一目惚れしたそのネックレスに人差し指を向けようとした。
すると、「これが似合いそうだ」と隣で声がして、私たちは同じネックレスを同時に指差した。
「まぁ、息がぴったりですね」と女性店員にからかわれ、クスクスと笑われてしまう。
恥ずかしさに顔を赤らめ、そっと神永常務の顔を覗き見ると、微かに眉間にシワを寄せる彼の頬も、ほんのりと桃色に染まっていた。