鬼常務の獲物は私!?
第二秘書が辞めてしまう理由は、神永常務が恐いからだと思う。
恐い上に、休日にプライベートな用事の運転手までやらせるような常務なのに、高山さんに嫌そうな感じは見受けられない。
それどころか、会社にいる時より口角が上がっている様子を見ると、運転手役を喜んで務めているようにさえ感じられる。
もしかして、高山さんは神永常務が好きなのかな……そんな疑問が湧いてきて、それをそのまま口に出して聞いてしまった。
すると神永常務は「あ" ?」と、不機嫌そうな声を出して横目で私を睨み、高山さんは運転しながら吹き出していた。
変な意味で言ったつもりはないのに……そう思う私に、高山さんは笑いながら答える。
「はい、確かに私は神永常務をお慕いしております」
「高山!」
神永常務は恐い声で高山さんを叱りつけているが、私は「やっぱりそうなんですか!」と、驚きに興奮の混ざった声で叫んでしまった。
「違う……」という常務の言葉は、もはや耳に入らない。
頭の中で常務と高山さんの恋愛について、どんどん妄想が膨らんでしまった。