鬼常務の獲物は私!?
恐くても、こき使われても側にいたいと思うのは、愛情があるから。
なるほど、それで高山さんが今日、運転手としてついてきたのも納得できる。
男性が男性を好きであっても、私は別に変だと思わない。色々な愛の形があっていいと思うから。
あれ? でも、そうすると……神永常務に交際を迫られている私は、高山さんの恋敵になってしまうのかな?
目障りな存在だと思われるのは、ちょっと嫌だな……。
常務は、高山さんの想いに応えるつもりはないのだろうか?
こんなに尽くしてくれる人は大事にするべきだし、私なんかよりずっと常務にとって有益な人なのに。
「おい、聞いてんのか?」
隣で常務がなにかを喚いていた。
その言葉は耳に入っていても頭の中まで届かずに、私はまだ妄想中。
高山さんの片想いについて思いを巡らせていると、突然ある考えがひらめいた。
パチンと両手を合わせた私は、妙に納得してひとり頷く。
そうか……そうだったんだ……私は男性ふたりの恋の隠れ蓑にされていたんだ……。
男同士の恋愛に偏見を持って見る人も少なくないから、私を偽の恋人として側に置くことで、ふたりの秘密の関係を守ろうとしているんだ……。