鬼常務の獲物は私!?

神永常務が、かっこいい……?

そう言われて、彼の見た目が極上のイケメンであることを思い出した。

黒髪には少しウェーブがついていて、大人のおしゃれさを感じさせつつも、清潔に真面目に整えられている。

切れ長二重の瞳はクールで知的な印象で、筋の通った高い鼻と少々薄く形のいい唇は、完璧な位置に配置されていた。

手足はスラリと長く、高身長。

高級スーツを着こなすそのルックスは、素晴らしいとしか表現できない。

かなり前のことになるけど、入社式で初めて神永常務を見たときに、来賓として俳優さんでも招待したのかと思ってしまったほどだ。


それほどに神永常務の容姿は素敵で、私もかつてはかっこいいと感じていた。

その気持ちを理香ちゃんに言われないと思い出せなくなっていたのは、きっと怯えているせい。

かっこいいと感じる前に、怖いと思ってしまうから……。


彼の容姿について思いを巡らせている間に、星乃ちゃんが理香ちゃんに、占い結果についても説明していた。

すると理香ちゃんは、さっきよりもさらに羨ましがり、私の右手を握りしめて興奮する。


「ずるいです! 運命の相手が常務って、将来は社長夫人じゃないですか!」

「そう。日菜は神永常務をゲットして玉の輿。占いでは近い内にセカンドコンタクトならぬ、セカンドインパクトが起きると出ている」

「インパクト!? きゃー、楽しみ! 日菜さん、がんばってください。ちょっと悔しいけど、私、日菜さんの恋を応援しますから!」


盛り上がるふたりを前に、なにもかも間違ってるよ、とは言えなかった。


「ええと……あ、ありがとう……」


困り顔でお礼を言って、心の中で呟く。

応援すると言われても、怖い常務に恋することはできないよ……。

セカンドコンタクトもインパクトもいらない。

クビにされないように、二度と接触がない方がありがたいのに……。

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