鬼常務の獲物は私!?



「お前がおかしな言い方をするからだ。
大体、お前はいつも俺に構いすぎる。今日だって、誰が運転手をやれと命令したんだ」


「クリスマスイブの今日は道路が混み合うと思いまして。常務の未熟な運転では危ないでしょう」


「あ"? 俺の運転が下手だと言うのか?」


「普通の範囲内ではありますが、私よりは下手でございます。仕事で移動する際、常務はいつも後部席にお座りになるので、運転技術が進歩しないのは仕方ありませんね」


高山さんに淡々と言い負かされ、神永常務は舌打ちした後に黙り込んでいた。

そのことに驚きつつ、謎がひとつ解けた気持ちになっていた。

謎とは、高山さんがなぜ常務について来たのかということ。

休日にデートの運転手をさせられて気の毒だと思っていたが、どうやら違うみたい。

常務のお世話がしたい高山さんが無理について来て、神永常務はそれを迷惑に思っているようだ。

こんなこと言うのは失礼かもしれないけれど、高山さんって……過保護なお母さんみたい……。


そんなことを考えている内に、車はさらに混み合うエリアに進んで行き、のろのろと前に進まなくなったと思ったら、赤信号で完全に停車した。


「高山、ここでいい。
目的地はすぐそこだから、ここからは歩く」

「分かりました。
どうぞお気をつけてお楽しみ下さい」

「日菜子、もたもたしないで早くコートを着ろ。降りるぞ」

「は、はい」

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