鬼常務の獲物は私!?
出掛けにポツポツと降っていた雨は止んでいた。
葉を落とした街路樹に青と白の電飾の花が咲き、多くの人たちが楽しげに往来している。
高山さんを見送ってから私たちも、イルミネーションの通りを歩き出した。
よく見れば周りはカップルだらけ。
クリスマスイブの街はやはり、恋人たちで溢れるものなんだと思うと同時に、ふと考える。
私と神永常務も、はたから見れば恋人同士に見えるのかな……。
前方から歩いてくるカップルの女の子が、神永常務にずっと視線を留めているのが気になった。
すれ違う際に「お前は……他人の男に見惚れてんじゃねぇよ」と、男性の文句が聞こえてきて、やっぱり私たちも恋人に見えているのだと自覚した。
常務は私の遅い歩みに合わせて、隣をゆっくり歩いてくれている。
その顔を見上げ、かっこいい人なんだよねと、改めて思っていた。
恋人と一緒に歩く女性にも、見惚れられてしまうほどのいい男……。
募集をかければ、彼の恋人になりたい女性がたくさん集まりそうな気がする。
より取り見取りなはずなのに、神永常務はどうして私なんかを欲しがるのだろう。
ドジでのろまで、失敗ばかりしてしまうダメな私を……。
神永常務はイルミネーションを見ながら歩いていた。
私は整った横顔を見ながら歩く。
すると、なにも障害物のない舗装道路で、なぜか爪先をアスファルトの地面に引っ掛けて転びそうになってしまった。