鬼常務の獲物は私!?
神永常務の腕に掴まり、イルミネーションの通りを数分歩くと、まだ聞かされていない次の目的地に見当がついた。
この先には大きなシアターがあるから、神永常務はきっと映画を観るつもりなのだろう。
「映画を観るんですか?」と聞いてみると、「そうだ」と答えが返ってきた。
常務はポケットから映画のチケット2枚を取り出し、私に見せる。
それを見て……私の足が止まってしまった。
タイトルは、『ホワイトラブ・アクチュアリー』。クリスマスを舞台に3組のカップルの純愛を描いた洋画だ。
笑いあり、切なさもあり、ロマンチックでラストは感動して大号泣してしまうこの映画を……私は先週の会社帰りに、星乃ちゃんと観に行ったばかり。
「お前が好きそうな気がして買ったんだが……違ったか? 嫌なら別の映画でもいいぞ」
困っている私を見て、神永常務の顔が曇る。
ハッとして、私は慌てて笑顔を作った。
「これが観たいです! 感動物のラブストーリーは大好きで、特にこれにはハマっちゃって、もう一度観たいと思っ……あ……」