鬼常務の獲物は私!?



その美味しそうな匂いにお腹が反応して、大音量で変な音を鳴らしてしまった。

今日は朝からずっと緊張していて、いつもよりご飯を軽めに済ませたことも悪かったのかもしれない。


それにしても、なんてタイミングで鳴らしてしまったのかと、お腹を押さえて青ざめた。

神永常務に呆れられてしまう……もっと機嫌が悪くなる……恐い……。

そんな心配をしたのだが、不機嫌だった常務は「すげぇ音」と言った後に、プッと吹き出して素敵な笑顔を見せてくれた。

あ……笑ってくれた……。


「気を遣わせたいわけじゃない。楽しませたいだけなんだ。
だから、お前の腹の言う通り、飯食いに行こう。
その方がお互いに楽しいだろう」

「はい!」


常務はまだ笑っていて、気づくと私も一緒に笑っていた。

なんだか、楽しい気がする……。

それは、もうすぐ美味しいご飯を食べられると期待するからなのか。

それとも、怒られると思ったのに、思いがけず、素敵な笑顔を見ることができたせいなのか……。


イルミネーションの通りから逸れて脇道に入り、数分歩いた所に、常務が予約を入れてくれたお店があった。

「ここって、お店ですか?」と思わず聞いてしまったのは、看板などお店を示す物が一切ない、シンプルでオシャレな外観の民家のような建物だったから。


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