鬼常務の獲物は私!?



常務に言われた"そういう店"の意味について、「うーん」と悩んでいると、前を歩く店員がクスリと笑って補足してくれた。


「私共の店は会員様のご紹介がなければ、ご利用にはなれません。
会員様が安心してお食事を楽しめますように、初めてのお客様はお断りしております」


早い話が、一見様お断りということで……。

京都のお茶屋さんみたいなその言葉で、この店の前に看板がなかった意味を理解した。

特別な人のための特別な店。
神永常務と一緒じゃない限り、私はここに入れてもらえないんだろうね、きっと……。


L字型の廊下の一番奥の部屋に通された。

広さ8畳ほどの空間で、エレガントな風合いの藍色の布張りソファーと白いテーブル、大型テレビが目を引いた。

窓際には、小さなクリスマスツリーが飾られている。

天井にはシャンデリア、壁には現代絵画、たくさん本の詰まった書棚まで置かれていて、まるでどこかの裕福な家庭のリビングを縮めたみたいな部屋だった。


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