鬼常務の獲物は私!?



ここがお店であると感じさせる物は、テーブルの上のメニュー表くらい。

「ご注文はお電話でお願いします」と店員は言い置いて、一礼してから出て行った。


ソファーは長方形のテーブルを囲むように、ひとり掛けがふたつ、ふたり掛けがひとつ置かれている。

神永常務はコートを脱いでひとり掛けソファーに投げ置くと、ふたり掛けソファーの右側にドッカリと腰を下ろした。

私もコートを脱いで……その後、困ってしまった。

どこに座ったらいいのだろう。

ふたり掛けソファーの常務の隣に座るべきか、それともひとり掛けに座るべきか、悩むところだ。

オロオロしていたら「なにやってんだ?」と言われて、腕の中からコートを取り上げられた。

そのコートは、空いていたひとり掛けソファーにポンと投げ置かれてしまい、私の迷いはすぐに解消された。

腰を下ろした場所は神永常務の隣で……。

やっぱり……と思ったのは、このソファーが小さいことだ。

隣に座ることを躊躇していた理由は、こんな風に腕や太ももが接触してしまいそうだったから。

ふたり用というより、ひとり半の幅しかなく、もしかしたらこのソファーは、体が触れ合うことを意図して作られているのかもしれない。


< 79 / 372 >

この作品をシェア

pagetop