鬼常務の獲物は私!?
ここがお店であると感じさせる物は、テーブルの上のメニュー表くらい。
「ご注文はお電話でお願いします」と店員は言い置いて、一礼してから出て行った。
ソファーは長方形のテーブルを囲むように、ひとり掛けがふたつ、ふたり掛けがひとつ置かれている。
神永常務はコートを脱いでひとり掛けソファーに投げ置くと、ふたり掛けソファーの右側にドッカリと腰を下ろした。
私もコートを脱いで……その後、困ってしまった。
どこに座ったらいいのだろう。
ふたり掛けソファーの常務の隣に座るべきか、それともひとり掛けに座るべきか、悩むところだ。
オロオロしていたら「なにやってんだ?」と言われて、腕の中からコートを取り上げられた。
そのコートは、空いていたひとり掛けソファーにポンと投げ置かれてしまい、私の迷いはすぐに解消された。
腰を下ろした場所は神永常務の隣で……。
やっぱり……と思ったのは、このソファーが小さいことだ。
隣に座ることを躊躇していた理由は、こんな風に腕や太ももが接触してしまいそうだったから。
ふたり用というより、ひとり半の幅しかなく、もしかしたらこのソファーは、体が触れ合うことを意図して作られているのかもしれない。