鬼常務の獲物は私!?



すると……見つけてしまった。

大きく書かれているクリスマス・スペシャルディナーコースに追いやられるように、右端に小さく載っていたのは、中華のコースメニュー。

その中の料理名のひとつに私の視線は釘付けになり、指が勝手に動いてそれを指し示していた。


「中華コースが食いたいのか?」と常務に聞かれ、「あんかけ炒飯が食べたいです」と、メニューから目を離さずに答える。

創立記念日の忘年会で、食べ損ねてしまった海鮮あんかけ炒飯のことは、まだ忘れていない。

社長への謝罪が無事に済めば、大失態をやらかしたことは仕方ないこととして片付けてしまえる。

しかし、あんかけ炒飯を食べ損ねたことだけは、仕方ないじゃ済まされない。

楽しみにしていたのに……食べた後にステージから落ちればよかったのに……私の馬鹿……。


「スペシャルディナーの方が旨そうだぞ?」と、常務が私の気持ちを変えようとしてきた。

「いいえ、あんかけ炒飯だけでいいんです。
あんかけ炒飯ひとつ、お願いします」

「お前って……変わった女だよな」


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