鬼常務の獲物は私!?
ソファーの肘掛の中に、オーダー用の電話が隠されていた。
常務は座ったまま受話器を取り、注文をする。
「ーーああ、そうだ。クリスマス・スペシャルディナーがふたり分と、あんかけ炒飯を単品でひとつ」
私はあんかけ炒飯だけでいいのに、常務はそれだけじゃ嫌みたい。
高そうなのに申し訳ないなと思って見ていたら、整った顔の眉間に急にシワが寄る。
「何度も言わせるな、あんかけ炒飯だ。おかしくても必要なんだよ。
ーーは? 食前か食後かだと? そんなの……あれ、どっちだ……。おい、日菜子、あんかけ炒飯はいつ出してもらったらいいんだ?」
注文がスムーズにいかず、神永常務はまた不機嫌になっていた。
それを見ても今だけは恐いと思わずに、私は元気に「食前でお願いします!」と答えていた。
心の中はあんかけ炒飯でいっぱい。
小さめソファーで常務と体が触れ合っていることさえ、気にならなくなっていた。