鬼常務の獲物は私!?
「お腹いっぱいで、大満足です。
ご馳走様でした!」
食後は幸福感に包まれて、はぁぁ〜と、気の抜けた長い溜息を吐き出した。
念願のあんかけ炒飯は涙が出るほどに美味しかったけれど、クリスマス・スペシャルディナーコースにも感動した。
あんなにプリプリな大海老を食べたのは初めてだし、口の中で溶けてなくなる牛肉も初体験。
高い物って、やっぱり美味しいんだね……。
空になったデザートプレートを男性店員が下げに来て、神永常務の前に食後酒のブランデーと、私の前にオレンジジュースを置き、「どうぞごゆっくり」と出て行った。
「酒はもういいのか?」と常務に聞かれる。
「はい、お酒は得意じゃないので……あ、でも、さっきのシャンパンは甘くて美味しかったです」
アルコールが体に合わないわけじゃなく、苦味や独特な香りが苦手だった。
ビールも日本酒も焼酎も苦手で、飲めるお酒といえば、カルアミルクやカシスオレンジなどの甘いカクテルだけ。
でも、今日出してもらったシャンパンは、マスカットジュースみたいに美味しく飲めた。
おかげで今は、ほろ酔いのいい気分。
緊張も戸惑いもお酒の力でどこかに吹っ飛び、満腹感からくる眠気に、あくびまで出る始末。