鬼常務の獲物は私!?
今の電話は、高山さんからなのか。
常務の言葉から推測すると、クリスマスイブの夜はタクシーが捕まり難いだろうから、帰りは迎えに行きますという連絡だろうか……。
私にとっては救いの電話でも、神永常務にすれば邪魔以外の何物でもなかったようで、パワハラめいた台詞で怒鳴りつけた後には、通話を切って電源まで落としていた。
高山さんて……本当に過保護。
今の電話のせいで、車内で一度否定された疑惑が、再びムクリと頭をもたげた。
やっぱり高山さんは、神永常務に恋愛感情を抱いているんじゃ……。
帰りの交通手段の心配というより、私と常務がくっつかないように邪魔したかったのではないかと、疑惑の目を向けてしまう。
常務を避けるように肘掛けに体を寄せて、訝しげな目で見つめる私。
そんな私の様子に気づいた彼は、焦りを顔に浮かべてから、諦めたように溜息をついた。
そして、おもむろにテーブルの上のブランデーグラスを手に取り、ひと口飲んでから静かな声で話し始める。
「高山が異常なほどに、俺に尽くす理由は……」