鬼常務の獲物は私!?
それは8年前の、私がまだ入社する前の話だった。
当時、神永常務はまだ部長職で、総務部にいたそうだ。
高山さんは秘書ではなく、総務部の経理課の主任。
部長と主任という関係のふたりだけれど、神永部長はまだ社会人3年目の25歳で、高山さんから仕事を教わることもあり、今ほどの上下関係はなかったらしい。
8年前のある日、男性社員のひとりが結婚することになったそうだ。
社員の慶事には、福利厚生費から3万円が現金支給される決まりになっていた。
その担当は経理課主任の高山さん。
でも、同じ経理課の本山田係長が高山さんに言った。『それ、俺がやっておいたよ』と。
なぜかここ数年、同じやりとりが度々交わされていた。
結婚や出産などの慶事の他にも、香典や外部講習会参加費などが福利厚生費から現金支給される。
その仕事を、担当の高山さんがやる前に、本山田係長が率先してやってくれることが多かった。
それについて高山さんは、本山田係長が好意でやってくれているものだと思っていた。問題が発覚するまでは。