鬼常務の獲物は私!?
問題発覚の時期は、それからすぐのこと。
結婚したのにお祝い金が支給されないと、男性社員が総務部にやって来た。
支払いの伝票処理は済んでいるし、福利厚生費の口座からも引き落としがなされている。それなのに本人はもらっていないということは……。
着服の疑いが、担当者の高山さんに真っ先にかけられた。
高山さんは自分ではなく本山田係長が関与していたのだと主張したが、通らなかった。
それは、本山田係長がしらばっくれて、罪をなすりつけようとしたせいだ。
社内に調査委員会が立ち上げられ、過去にさかのぼり調査した結果、なんと高山さんが担当者になった2年前からの不明金が18件、金額にすると70万ほどが判明した。
会議室で調査委員会のメンバーに尋問されながら、高山さんは信じてもらえない悔しさに、辞職も考えていた。
そこに現れたのが、神永部長だった。
右手で本山田係長の襟首と、左手に証拠を持って、会議室に乗り込んできた。
証拠とは、本山田係長が利用していた消費者金融の借金返済履歴。
着服があったと思われる日から数日以内に、着服額と同額が必ず返済されていたのだ。
それに加えて、本人からの自供も。
左頬に殴られたような痣を作った本山田係長は、隣に立つ神永部長に怯えながら全てを白状し、後に解雇されることとなった……。