鬼常務の獲物は私!?
「……というわけだ」
神永常務は話し終え、小さくなったブランデーグラスの氷をカランと鳴らした。
「結果として高山の窮地を救ったことにはなるが……それは会社のためであり、高山だからということではない。
あいつは冤罪被害者で礼の言葉も不要なのに、やけに恩を感じる奴で……あれからずっと、一番側で俺を支えてくれるんだ……」
過去を噛み締めているような表情で、神永常務はグラスの中の氷を見つめていた。
「あの時の恩はとっくに返してもらった。もうこれ以上、尽くす必要などないのにな……」
私の心は大きく揺すぶられていた。
綺麗な横顔がぼやけて見えにくいのは、涙のせいなのか……。
「だから日菜子、勘違いしないでくれよ。
俺と高山は変な関係では決してないから……」
常務は視線をグラスから私に移し、切れ長の目を見開いた。
「お前、なんで泣いてんだ?」
「だって……」