鬼常務の獲物は私!?



私を真っすぐに見つめる切れ長の瞳は、いつもより暗い色。

凹んでいるように見えるのは気のせいかもしれないが、常務の顔色を伺いながら、私はゆっくりと首を横に傾けた。


「いえ、太郎くんには、ちゃんと言ってから出ましたよ。神永常務と出掛けてくるから、いい子で待っていてねって……」

「なに⁉︎」


なぜか常務は驚いていた。
その後には、訝しげな視線を向けてくる。


「それで……太郎は止めなかったのか?」


「はい。太郎くんは賢い子なので、私が出掛けなければならないことを、ちゃんと分かってくれます」


「お前が男と出掛けても、平気だというのか?
俺には理解できん……」


「寂しそうにはしてます。
会社に行く時も出掛ける時も、私の毛布に潜り込んでふて寝しちゃうから、心がギュッと締めつけられて……」


でも、会社に行かないと生活できないので、後ろ髪を引かれる思いで出掛けている。

その分、帰ってきたらたくさん甘えさせてあげるけど。


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