鬼常務の獲物は私!?
胸にバラの刻印を
◇◇◇
クリスマスイブのデートから2日後のこと。
今日は月曜日。大きめのショルダーバッグに紙袋がふたつと、いつもよりも大荷物を抱えて出勤した。
「おはようございます」と営業部のフロアに足を踏み入れた途端に、左右を星乃ちゃんと理香ちゃんに挟まれて、休憩室に連行されてしまう。
そこには、他に10名もの営業部女子社員が立ち並んでいて……。
皆んな、デートの報告待ちなのだということにすぐに気付いたが、まずは貸してもらった服やコートをひとりひとりに返して、丁寧にお礼を述べた。
「それで、これをお礼にと思いまして。私が焼いたクッキーです。お口に合うか分かりませんがもらって下さい」
透明の袋に入れてチェックのリボンで縛ったクッキーを、紙袋から取り出す。
それを、服を貸してくれた人だけじゃなく、この場にいる全員に配った。
「猫型クッキーか、意外と上手」
「可愛いね、ありがとう」
笑顔でもらってくれた女子社員の皆さんだけど、ラッピングが開けられることはなかった。
クッキーはどうでもいいと言いたげな、ワクワクした顔に囲まれて、「で? 神永常務とはどうなったの?」と聞かれてしまった。