鬼常務の獲物は私!?
以前この休憩室で、『ギャーッ!』と叫ばれたことは、まだしっかりと記憶に残っている。
だから今回は叫ばれないように、結論を先に言ってみた。
「デートはしましたが、結果としてお付き合いには至らず……」
「あ〜」と残念そうな声が、休憩室に響く。
ガッカリさせてしまったことは申し訳ないが、叫ばれなかったことにホッとして、デートでの主要な出来事を後から付け足した。
「プレゼントにネックレスをいただいてしまいました。それから食事をご馳走になって……」
「ふーん、健全だね」
「その後、キスされました」
「ギャーッ‼︎」
気を抜いていたところに絶叫されて、盛大に驚いた私は壁に背中をぶつけてしまう。
「なんでそれを最初に言わないのよ!」と、興奮気味の皆んなに叱られながら、驚かされてバクバク鳴っている鼓動を静めようと、胸に手を当てていた。
すると、私を取り囲む女子社員を掻き分けて、星乃ちゃんが正面に立つ。
星乃ちゃんのことだから、きっと交際に至らなかったことを責められると思ったのに、私の頭に手が乗って、よしよしと撫でられた。
「日菜にしては、よくがんばった。
今回は合格点をあげよう」
「え? 付き合ってないのに?」
「キスまでくれば、後は時間の問題でしょう。
今後も常務は強引に攻めて来るだろうし、後は日菜がOKを出すだけ」
「それは……ええと……」