仲間ってなんだろう

2人は1つのビルに足を踏み入れた。



入れば一番に目に入るのは大きなロビーで、2人はその真ん中を突っ切って歩き始めた。




「6月にデビューだから、あと1ヶ月半…」




「もうちょっとだね…。大丈夫かな?上手くいくかな?」




2人は多くの不安を抱えながらロビーを出ると、そこにあるエレベーターに乗った。




「…上手くいくはずだよ、大丈夫。このためにずっと前から用意してきたんだから。」




紗羅がそう言ってふう、とため息をついた時、ポーンという音がしてエレベーターは止まった。



エレベーターが微かな音を立てて開くと、そこは2人が所属する事務所だ。



2人が事務所に入ると奥の方で1人の女性が手を振っていた。



それもブンブン振っていて、その人が興奮していることは誰が見てもわかる。




「紗羅!美那!いいところに来たわ、ちょっと来て!」




「瑞希さん?どうしたんですか?」




瑞希は赤いメガネの奥にある目を細めて笑った。




「大事な知らせよ。早く!」




瑞希は2人のマネージャーで3年前に大学を卒業したばかりだったが、小さい頃からの子役の経験があり、事務所の中でも敏腕だと有名だった。



2人は顔を見合わせてすぐに走り寄った。



瑞希はそれを見ながら興奮を抑えるように長い髪をくくる。



「いい知らせかどうか考えるのはあなた達次第なんだけどね。さっき社長が私を呼んで、言ったの。」




瑞希はどこか夢見心地に笑った。




「…なんて、言ったんですか?」




2人の緊張した顔を見て瑞希は安心させるように笑う。




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